風立ちぬ

ラストでの「自分のつくった飛行機に乗った人間は誰も帰って来なかった」という台詞が胸に染み入る.技術者は時代に関係なく生きられないものだろうか? という思いが頭をよぎった.時代とは無関係に美しいものを作りたいという願い.これは技術者の身勝手な思いなのだろうか.

長引く不況,震災,右傾化,解決の見通しが立たない原発事故など.この映画で描かれる時代と現代がもつ不安感は見事に重なる.はたして,この国は戦争へ向け歩みを進めるのか.

冒頭の蚊帳と畳の緑色が美しく,機関車の走る姿,飛行機の飛ぶ姿の力強さ,優雅さは名人芸.いままでのジブリのファンタージと同列で比較するのは無理があるが,わたしの中で,この作品は宮崎アニメの頂点となった.